こんにちは。実生mioと申します。
今回ご紹介するのは、群馬県館林市にある「尾曳稲荷神社」さん。
つつじが岡公園の北側に鎮座し、地元の方々からは「尾曳様(おびきさま)」と親しみを込めて呼ばれています。
春のある日、心地よい日差しに誘われて、ひとりぶらりと足を運んでみました。
澄んだ青空の下、桜の木々が枝を広げて、まるで「ようこそ」と言ってくれているようでした。
尾曳稲荷神社 室町の記憶を忘れない
尾曳稲荷神社・基本情報・アクセス
所在地 | 群馬県館林市尾引町10-1 0276-72-1293 |
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公式サイト | |
御祭神 | 倉稲魂命(うかのみたまのみこと)・誉田別命(ほんだわけのみこと) 素戔嗚尊(すさのおのみこと)・倭建命(やまとたけるのみこと) |
創建 | 1532年(天文元年) 館林城主(尾曳城)の赤井照光氏(武士) |
駐車場 100台 |
尾曳さまと慕われる尾曳稲荷神社
時は室町時代、戦国の初期――
1528年、赤井氏が大袋城(後の館林城)に居を構えていた頃のこと。
ある正月、子どもたちにいじめられていた子ぎつねを助けると、その夕方、親ぎつねが現れてこう語ったといいます。
「その城は不吉。これから尾を引いて、新しい城の場所を教えましょう。
そこに城を築けば、必ず栄え、我らが結界を張って守護いたします」
その晩、親ぎつねは夜を徹して尾で地面をなぞり、城を築くべき場所を導いたのだそうです。
赤井氏はそのお告げを受け入れ、新たな城を築きました。
そして、狐が尾を引き始めた場所に「宵稲荷神社」、引き終えた場所に「夜明稲荷神社」、
そして、城の鬼門を守る位置に「尾曳稲荷神社」が祀られたと伝えられています。
1532年、館林城(別名・尾曳城)が完成すると、狐との約束通り、赤井氏は稲荷神を祀る神社を築かれました。
城は、周囲5キロの「城沼(じょうぬま)」を天然の堀とした要害の地に築かれ、
創建から焼失に至るまでの342年もの間、稲荷神社とともに数々の歴史を刻んでいきました。
その後、館林城は再建されることなく今に至りますが、
尾曳稲荷神社、宵稲荷神社、そして夜明稲荷神社は、今も変わらずこの地を見守り続けておられます。
明るい陽射しが降り注ぐ参道の見どころは、鳥居の両側に植えられた草花と、狛狐のお稲荷さんです。
赤い鳥居以外にこちらの参道には三基の石の鳥居。
距離間が短いですが、一の鳥居、二の鳥居そして三の鳥居。
神様に近づくに連れて結界が張られるように三基ありました!
境内に佇む御稲荷様。
その手に握られているのは、毬(まり)…?
それとも──どんぐりでしょうか?
ふとそんな空想がよぎるのも、この神社が、どこか懐かしく、
そして温かい気配に包まれているからかもしれません。
御祭神 倉稲魂命(うかのみたまのみこと)・誉田別命(ほんだわけのみこと)
素戔嗚尊(すさのおのみこと)・倭建命(やまとたけるのみこと)
摂社巡り
お参りをすませたあとは、
境内をゆっくりと歩いてみました。
風の音も、木々の揺れも、どこか優しく感じられます。
「猿田彦大神」と刻まれた石碑を見つけました。
お導きの神様、そして交通安全の守り神として知られる存在です。
境内の三峯神社には、日本のはじまりを紡いだ夫婦神、イザナギノミコトとイザナミノミコトが祀られています。
命をつなぎ、縁を結ぶ、やさしく力強い神さまです。
階段をのぼると、そこには少しだけ開けた空間が広がっていました。
ここは……!
なんと、すぐ右手に尾曳稲荷神社の本殿が──
想像以上に近くて、思わず息をのみました。
こんなにも近距離で、御神気を感じられるなんて……
しばらくのあいだ、その贅沢な空間に身を委ねて、ただ静かに深呼吸。
ここは間違いなく、パワースポットです。
丘を降りると、「花の弁財天」が静かに祀られていました。
御祭神は、水の女神・市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)。
ご真言は「オン サラスバティエイ ソワカ」──
美しい音の響きが、風に溶けるように境内に広がります。
この「花の弁財天」は、「つつじの館林 七福神めぐり」の一社でもあります。
インドの水の女神サラスバティと、日本の宗像三女神の一柱・市杵島姫命は、
その神性が似ていることから同一視され、七福神の「弁財天」として信仰されています。
花の弁才天を後にすると、
道のそばや木のかげに、そっと佇む小さなお社たち。
あちらにも、こちらにも──
ここはきっと、キツネさんたちの棲みかです🦊🦊
尾曳稲荷神社 骨董市
尾曳稲荷骨董市は、境内で開かれるフリーマーケットです。
開催は毎月第3・第5土曜日、日の出から日没まで。
掘り出しものとの出会いを楽しめる、人気の催しです。
お問合せ先 骨董企画 一歩会
0276-72-4856
この日はとても清々しく、神様からのヒントもいただけたような気がして──
心に残る、最高の神社参拝となりました。
さて、次に向かうのは、気になっていた二つの神社。
「宵稲荷神社」と「夜明稲荷神社」です。
どちらも、狐の尾曳伝説に登場する大切な場所。
尾曳稲荷神社から車で5分ほどの距離にありますが、歩いて行くには少し遠そうです。
宵稲荷神社
こちらが宵稲荷神社。
住宅街の中に、ひっそりとたたずんでいます。
御祭神は、倉稲魂命・大海津見命・大物主神。
それぞれ、五穀・海・国土をつかさどる神々です。
夜明稲荷神社
こちらが夜明稲荷神社。
御祭神は、倉稲魂命です。
コロナ禍には、お稲荷さんがマスクをしていた姿を写真に収めることができました。
今思い返しても、あの光景には心がじんとします。
これですべての神社を巡ることができました。
今はない城と、市民の憩いの場となった城沼。
そして、語り継がれる狐の伝説。
説明板はあっても、小さな神社の存在が忘れられてしまうこともあると感じ、
それを守ってゆくことの大切さをあらためて思いました。
周辺の観光地
- つつじが岡公園
- 城沼公園
- 田山花袋旧居
- 旧モスリン事務所
- 向井千秋記念館
- 田山花袋記念文学館
つつじが岡公園
現在のつつじが岡公園の周辺は室町時代には「つつじが崎」と記されていたそうで、その時代から歴史深い公園です。
つつじの花の見頃はゴールデンウイーク頃ですが、1月のロウバイや2月の梅なども素敵です。
城沼公園
550年前、周囲5キロの東西に伸びる城沼を天然の要害として館林城が築かれたました。
城沼は武将たちにとって「守りの沼」となりました。
明治維新後、江戸時代に禁魚区であったのが解放され漁労・墾田・渡船などが営まれるようになり、「里沼」としての歴史を歩み始めました。
日本遺産館林市の「里沼」 より
4月、沼の畔に植えられている桜の木が一斉に花開き、沼を渡している鯉のぼりと桜の花が昼夜を問わず人々の心を癒してくれます。
沼をぐるりと一周すると30分くらいです。
沼の東側に佇む旧秋元別邸ではお抹茶を頂けます。(要確認)
館林市つつじのまち観光課
0276-74-5233
田山花袋旧居
田山花袋(たやま かたい)は、群馬県館林市に生まれた小説家です。
明治から大正にかけて活躍し、日本の自然主義文学を代表する存在として知られています。
時代の荒波に翻弄されながらも、常に学びを怠らず、
庶民の暮らしや人間の内面を真摯に見つめ、数々の名作を生み出しました。
代表作には、自身の体験をもとに書かれた『蒲団』や、旅を通して綴った随筆『東京の三十年』『田舎教師』などがあります。
花袋の作品には、どこか哀しみと優しさがにじんでおり、
読む人の心に、静かに語りかけてくるような余韻があります。
田山花袋が7~14歳までを過ごした家屋です。
旧モスリン事務所
こちらは、群馬県館林市・城沼近くに移築保存された旧上毛モスリン事務所(現在は館林市第二資料館)です。
✨建物の見どころ
明治41~43年に建築された木造2階建ての擬洋風建築。入母屋造りの屋根に、左右対称の外観や上下開閉式の窓など洋の意匠を取り入れたデザインが特徴ですウィキペディア+13館林市公式サイト+13ニッポン旅マガジン+13。
上毛モスリン株式会社の本館事務所として建てられ、この地で地域を支える産業の中心的存在でした。
📚歴史と現在
明治35年創業の上毛モスリンは、館林の近代化を支えた織物会社。明治43年に工場を城沼南側(館林城二の丸跡)に移転し、事務所として使用されましたじゃらん+13ウィキペディア+13ニッポン旅マガジン+13。
関東大震災後の再編を経て、日本毛織や神戸生絲の施設としても使われ、戦後はGHQ倉庫にも。一時期は取り壊しの危機にあったものの、市が曳家移築し保存へウィキペディア+2ニッポン旅マガジン+2群馬県立世界遺産センター 検索はセカイト+2。
現在は群馬県の重要文化財に指定され、「ぐんま絹遺産」の一つ。資料館として無料公開され、館林の産業と建築を今に伝えています館林市公式サイト+3群馬県立世界遺産センター 検索はセカイト+3ニッポン旅マガジン+3。
🗺️アクセスと楽しみ方
館林駅から徒歩15分、または城沼周辺を散策しながら訪れるのがおすすめ。無料駐車場もあり、つつじが岡公園とあわせて訪れやすいスポットですameblo.jp+24travel+24travel+2。
建物内部では、当時の書庫や受電室、階段・窓など洋と和の融合が垣間見える構造を自由に見学できます(スリッパ着用)館林市公式サイト+2tripadvisor.jp+24travel+2。
のんびり過ごせる庭や、ライトアップイベントも魅力。フォトスポットとしても人気ですよ📸。
夕方から21時まではライトアップされ洋館の美しさに心を奪われます🌸
(季節によって変動)
館林の近代産業や洋風建築の歴史を静かに物語るこの建物。城沼や公園とともに、当時の空気を感じられる大切な文化財です。明治期のモダンと和の調和、そして地域の歩みを訪れながら感じてみてくださいね。
向井千秋記念館
群馬県館林市出身の宇宙飛行士・向井千秋さんの軌跡をたどることができる科学館です。
日本人女性として初めて宇宙へ行った向井さんの生い立ちや、宇宙での生活・実験の様子などが、写真や映像、模型を通してわかりやすく展示されています。
宇宙食や宇宙服の展示のほか、子どもたちが楽しみながら学べる体験コーナーやプラネタリウムもあり、世代を問わず宇宙への興味が広がる施設となっています。